縮小ニッポンを救うのは
官民学連動の底力、
移動·交通システムの骨太な新戦略だ。
混迷と波乱──。能登半島大地震で幕を開けた2024年は難題噴出の1年だった。
自民党議員の裏金疑惑、旧統一教会問題、相次ぐ闇バイト事件、異常気象・洪水被害、名目GDPの世界4位転落、深刻化する人口減少──。 野村証券社員の強盗殺人未遂事件、三菱UFJ銀行の貸金庫窃盗事件は個人の不祥事というより企業体質が問われる事件と言うべきだろう。
MLB大谷翔平の50・50達成、パリ五輪の日本勢メダルラッシュで溜飲を下げた人も多かったと思うが、 日本社会に重苦しい暗雲がたれこめた1年だった。
年末には本田技研工業、日産自動車、三菱自動車工業の3社が経営統合に向けて協議を進めていくことを発表した。 3社は2026年8月の持ち株会社設立を目指して検討を重ねていく。 この経営統合は日産自動車の業績悪化が直接的な要因と見られているが、 その背景にあるのは100年に1度と言われる自動車産業界の構造変革だ。 3社連合によるスケールメリットは大きいだろうが、 石油から電気へのエネルギーシフト、 ソフトウエア主導のクルマづくりなど新時代への対応を見誤ると将来へ向けての展望は切り開けないはずだ。
米国・テスラ、中国・BYDなど新興メーカーが台頭する中、 日本の自動車業界には難局を突破する構造改革、体質改善、不屈の底力が不可欠事項だろう。
石油・化石燃料から電気へ──。
エネルギーシフト踏まえた
モビリティミックスは時代の要請
日本国内の移動・交通手段にも構造変革、新たなシステムの導入が求められている。
総務省統計局によれば2024年12月1日現在の国内総人口は1億2374万人で、前年同月比56万人の減少となった。 歯止めがかからない日本の人口減少。 2050年には1億人を割り込み、約9500万人まで落ち込むことが確実視されている。
深刻化する人口減少問題は政治・経済・社会の幅広い視点から考察し、 対応策を断行していくことが必要だが、 移動手段の再編、再構築も重要な課題だろう。 向こう数十年にわたって日本の人口減少が避けられないとするならば、 それに対応する交通システムの構築は国づくり、まちづくりの根幹に関わる基本テーマだ。
高齢化が進み、人の移動が減少すれば、それに伴って経済活動も停滞し、国の活力が低下することは避けられない。 人は移動することで心身の健康バランスを保持し、活動意欲を創出しているはずだ。 人の移動を支えるモビリティの開発·再編、交通システムのグランドビジョン構築は日本再生に不可欠の課題と言えるだろう。
人口減少、縮小ニッポンを救うための移動手段、交通システムはいかにあるべきか。 そのための抜本的な対応策を見極めていくためには陸·海·空、モビリティ全体を見渡す視点が大切だ。 陸に限ってもバス、自動車、バイク、自転車などあらゆる乗り物を視野に入れた対策が求められる。 新たな電動モビリティ、AI、IoTの活用も必要不可欠事項だ。
自動車産業の構造変革、加速するエネルギーシフトへの対応、官民学連動による新技術開発、 モビリティミックスを踏まえた交通システムの再編······。 ピンチをチャンスに変える骨太なモビリティのグランドビジョン、反転攻勢への新戦略が日本の交通シーンに求められている。
(本誌・高木賢)
押し寄せる自動車変革の大荒波。 カーボンニュートラルの大合唱の下、EVシフトへの流れはもはや止めようがないだろう。 紆余曲折はあるにせよ、世界の自動車界が新たな地平に踏み込んだことは動かしようがない事実だ。
世界の、そして日本の自動車界はどう動き、どんな交通システムを構築していくのか。 新たな時代の移動システムはどのように形成されていくべきなのか。
「Mobility Life」編集部は、 公益社団法人自動車技術会ワイヤレス給電システム技術部門委員会幹事の横井行雄氏に自動車界の歩みを振り返っていただくとともに、 EV(e-mobility)の現状と普及に向けた可能性を展望していただいた。
日本の自動車界、そして日本社会が選択すべき道筋とは──。
三菱自動車も合流を検討、2026年8月に持ち株会社設立へ
本田技研工業(本社・東京都港区、代表取締役社長・三部敏宏)と 日産自動車(本社・神奈川県横浜市、代表取締役社長・内田誠)は 昨年12月24日、経営統合の協議に入ることを正式発表した。 両社は2026年8月の持ち株会社設立に向けて協議を進めていく。 また、日産自動車が筆頭株主の三菱自動車工業(本社・東京都港区、代表取締役社長・加藤隆雄)も 本田技研工業、日産自動車の両社と合流して経営統合を検討していく方針だ。
3社による経営統合が実現すれば新会社の自動車販売台数は800万台超と世界3位の規模になり、 協業の枠組みの中でスケールメリットを望めることは間違いない。 しかし、新体制に要求されるのは単なる規模拡大だけでなく、 「100年に1度」と言われる自動車業界の変革期を乗り越えていく新たな製品開発力の強化·拡充だろう。 大胆な生産体制の変革が期待されている。
世界販売台数3位の自動車グループ誕生へ
問われる〝変革期をリードする生産体制〟の構築
背水の大連合──。 本田技研工業、日産自動車の両社が経営統合へ舵を切った。 世界の自動車業界が注目する連合劇は日産自動車の業績悪化が直接的な要因で、 台湾の鴻海精密工業(ホンハイ)が日産自動車への経営参画を模索していることへの対応策とも見られている。 日産自動車は鴻海による自社買収の動きを否定しているが、 いずれにしても本田技研工業と日産自動車は経営統合を決断したわけで、 両社連合による構造改革を進めていくことになった。
2024年3月期における本田、日産の売上高を合算すると約33兆円で、両社の世界販売台数合計は735万台だ。 これに三菱自動車の販売台数を加えると813万台になり、 3社連合が成立すればトヨタグループの1123万台、 独フォルクスワーゲングループの923万台に次ぐ世界3位の販売台数を持つ自動車メーカーが誕生する。
経営統合には車両プラットフォームの共通化や生産拠点の効率化、部品供給網の最適化など大きなスケールメリットがあることは確かだが、 難題も待ち受けている。 経営効率化の過程で工場や人員の削減は不可避と見られており、 新会社が生産体制の再編をどのように推進していくのかが注目される。 新会社には合従連衡に伴う課題が待ち受けている。
自動車産業界は今、大変革期に直面しており、 石油から電気へのエネルギーシフト、ソフトウエア主導のクルマづくりへの転換が進行中だ。 大変革の波がうねりを見せる中、米国·テスラや中国·BYDなど強力な新興勢力が台頭し、 世界の自動車産業界の地殻変動が急速に進んでいる。 本田技研工業、日産自動車、三菱自動車工業の経営統合は、そうした急変する業界情勢を視野に入れた動きである。
3社連合による新会社には危機を乗り越え、 世界をリードする魅力製品を開発していく体制構築が何よりも求められている。
ENEOS
日本の総合エネルギー企業であるENEOS(本社・東京都千代田区、代表取締役社長・山口敦治)は 2022年下期からEV事業をスタートさせ、エネルギートランジションの中で先進的な事業を展開している。 全国約1万2000ヵ所のSSは確固たる独自ネットワークで、 日本が推進していくEVのインフラ整備に大きな影響力を持つものであることは明らかだ。
ハイパワー急速充電器、防爆構造に対応した急速充電器の開発、EVトラックの受け入れに適応したSSの拡充、 新たなライフスタイル創出を推進する複合店舗型SSの研究──。 カーボンニュートラル時代を牽引するENEOSのEV事業は、 日本国内のEVインフラ整備のカギを握っていることは間違いないはずだ。 「ENEOS Charge Plus」には、 電力のチャージに“プラスしたサービス”を全力で提供していくという同社のメッセージが込められている。
EV事業推進部EV事業企画グループの森真治グループマネージャーにインタビューした。
(本文は雑誌に掲載)
カーボンニュートラルに貢献していくにはエネルギーの変換効率、 電源効率を極限まで追求して二酸化炭素の排出量を抑え、 エネルギーロスを減少させる──。 EV充放電機器の大手メーカーとして知られる新電元工業(本社・東京都千代田区、代表取締役社長・田中信吉)が掲げる企業ミッションだ。
同社のEV充放電インフラ機器は定評あるところだが、 中でも三相電源対応のV2Xシステムは独自のエネルギー変換技術を惜しみなく注入して開発した高機能製品で業界内外の注目を集めている。
横井義治エネルギーシステム事業部長がリードする新電元工業EV充放電機器の開発スタッフにインタビューした。
(本文は雑誌に掲載)
太陽誘電
坂道で推進力を発揮する電動アシスト自転車の人気は世界各国でさらに高まりを見せており、 自転車界の救世主的存在として位置づけられている。 そんな電動アシスト自転車の価値をさらに高めるシステムが開発された。 太陽誘電(本社・東京都中央区、代表取締役社長・佐瀬克也)が開発した 回生電動アシストシステム「FEREMO(Future Energy Recycling system for Mobility=フェリモ)」だ (「FEREMO」は、日本及びその他の国における太陽誘電の登録商標または商標)。
「FEREMO」を搭載した丸石サイクルの「Re:BIKE(リ・バイク)」、 そしてアサヒサイクルの「evol GNU(エヴォル ヌー)」は 回生充電の効果で最大1000kmの走行が可能とするキャッチフレーズを掲げ、 自転車市場に旋風を巻き起こす構えだ。 「FEREMO」が自転車ワールドに投げかけるインパクトは、衝撃的と言っても過言ではないだろう。 2社以外にもJOeBテックや武田産業などの自転車メーカーも「FEREMO」搭載車を開発・販売する予定だ。
「Mobility Life」編集部は群馬県高崎市にある太陽誘電八幡原工場を訪ね、 「FEREMO」開発の担当技術陣に話を聞いた。
(本文は雑誌に掲載)
東光高岳
東光高岳(本社・東京都江東区、代表取締役社長・一ノ瀬貴志)は、 EV急速充電器の新ブランド「SERA(セラ)」シリーズを立ち上げて好評展開中だが、 このほど同シリーズに150kWモデルの「HFR1-150B12」を追加でラインアップした。 同社は2025年4月から「HFR1-150B12」の販売を開始する。
また、同社は引き続き「SERA」シリーズの製品ラインアップを拡充していく方針で、 最大出力の350kW次世代超急速充電器の開発にも着手している。 「SERA」シリーズの商品展開に注目したい。
(本文は雑誌に掲載)
兼松
ICTソリューション、食料、車両・航空など5つのセグメントを軸にビジネスを展開する 商社の兼松(本社・東京都千代田区、代表取締役社長・宮部佳也)は 2024年6月、韓国で販売台数No.1の実績を持つEV充電器メーカー・EVAR社と同社EV充電器の拡販に関する覚書を締結し、 EV充電インフラ事業をスタートした。
また、同社は日本国内において NTT REC(NTTレンタル・エンジニアリング、本社・東京都千代田区、代表取締役社長・新居丈司)との連携を進め、 EVAR製EV充電器の販売ビジネスを本格化させていく方針だ。
EVAR社製EV充電器は韓国でEV充電器のトップシェアを誇っており、 これまでに4万台のEV充電器を販売している。 日本国内で販売される製品は普通充電器の「ACE PRO」。 韓国国内で高い競争力を示した同製品の日本における荷動きが注目される。
(本文は雑誌に掲載)
アーキエムズ
さらに便利で快適に、そして安全に──。 私達の社会生活は先進技術をベースに日々改善・改良を続けている。 むろん駐輪業界も例外でなく、駐輪場の利用者と管理者双方にとって利便性の高いシステムを導入するのは当然の流れだろう。 今回、本欄で紹介することにした近鉄奈良線の生駒駅周辺駐輪場(奈良県生駒市管轄)と阪急電鉄岡町駐輪センター(大阪府豊中市)も 定期利用のWEB決済を採用するなど駐輪システムの一新に踏み切った。
生駒市、及び阪急電鉄が導入を進めていくのは アーキエムズ(本社・京都市中京区、代表取締役・村田雅明)の最新駐輪システムで、 官民協業体制を強化して駐輪場運営システムを進化させていく方針だ。
(本文は雑誌に掲載)
YOUON JAPAN
中国でシェアサイクル事業などを展開するモビリティ企業の 永安行科技(Youon Technology、本社·中国江蘇省常州市、孫継勝董事長)の 日本法人·YOUON JAPAN(本社・東京都新宿区、代表取締役社長・吉永尚平)は、 水素自転車や各種水素燃料電池モビリティ、水素エネルギーを活用した家庭用電気供給システムを日本国内向けに提案中だ。
太陽光エネルギーを利用して水を電気分解し、水素を生成。 さらに低圧自動充填システムを経て水素自転車の製造や家庭内の電気供給システムを推進──。 同社の最新テクノロジーに対する注目度は高い。
吉永社長にインタビューした。
(本文は雑誌に掲載)
シゲオー×エコ配
業務用電動アシスト自転車の開発とメンテナンスを主力業務とし、 ラストワンマイルの配送業務を支えるシゲオー(本社・東京都北区、代表取締役・鈴木時人)。 同社の製品開発力は定評あるところだが、 とりわけ注目されるのが電動アシスト自転車と特注リヤカーを連結させた デリバリー用車両「LAND PORTER(ランドポーター)」ニューモデルだ。 同車両はオリジナルパーツの自動ブレーキ「i-BAS(intelligence Brake Assist System・アイバス)」を搭載した高機能製品で、 デリバリープロ集団の確かな信頼を勝ち得ている。
本誌取材班は「LAND PORTER(ランドポーター)」を配送業務の主力車両として採用している エコ配(本社・東京都千代田区、代表取締役社長・塚田俊)の日本橋店を訪ね、 同社事業本部人財開発部の岩下善亮部長、及びシゲオースタッフにインタビューした。
(本文は雑誌に掲載)
ダイゾー
ダイゾー(本社・大阪市港区、代表取締役会長兼社長・南宣之)の陸機事業部は、 「e-NEO」のブランド名を冠したEV·小型モビリティの開発・販売事業を開始した。 同陸機事業部ではこれまで駐輪機器を主力商品として実績を積み重ねてきたが、 EV関連事業を手掛けるのは今回が初めてで、それだけに業界内外で注目を集めている。
取り扱う商品は電動三輪車のオリジナルEV「NEO-ONE(ネオ・ワン)」、 前二輪の電動バイク「NEO-D50」、「NEO-S20」などで、 今後の荷動きが注目されている。
(本文は雑誌に掲載)
「BICYCLE-E・MOBILITY CITY EXPO 2025~自転車・電動モビリティまちづくり博」は 6月11日(水)・12日(木)の両日、 東京都新宿区西新宿の新宿住友ビル三角広場(屋内イベント空間)で開催される。
会場にはモビリティ変革の時代を反映したEV(電気自動車)、 電気バス、電動バイク、電動アシスト自転車など多彩な乗り物、電動モビリティ、 及びEV 充放電機器、駐輪・駐車場関連機器、パーツ・用品等が展示され、 新たな移動・交通システムの創造へ向けてエキサイティングな提示・提案を展開する。
本展示会はEV・次世代モビリティを活用した未来志向のまちづくりを展望する展示イベントだ。
(本文は雑誌に掲載)
中国工場との連携ベースに高機能電動車椅子を製造
トリニティP.S.(本社・大阪市西区、代表取締役社長・湛佐東)は多彩な介護用品の製造・販売で評価を高めてきたが、 ここ数年来、“未来へ繋がる”電動車の開発・製造に注力し、電動車椅子を主力に高機能電動モビリティの拡販を推進している。 企画・開発から製造、販売、アフターメンテナンスまで一体化した事業展開でユーザーの信頼を集める同社の動向は特注だ。
トリニティP.S.の代表取締役社長兼プロジェクトマネージャーを務める 湛佐東氏のインタビュー記事(PART1)と同社の注目商品であるリハビリ用電動車椅子「KWB」の解説記事をお届けする。
(本文は雑誌に掲載)
EVモーターズ・ジャパン
EVモーターズ・ジャパン(本社・福岡県北九州市、代表取締役社長・佐藤裕之)は 昨年12月23日、日本初の商用EV専用量産組立工場「ゼロエミッション e-PARK」(北九州市若松区向洋町) の第1期工事完成お披露目会を実施した。
「ゼロエミッション e-PARK」は商用EVの量産組立工場を併設した体験型EV複合施設で、 2025年度中に国産EVバスの生産を開始する見込みだ。 商用EVの強固な生産体制を構築し、EVシフトの促進に注力する同社の動向が注目される。
(本文は雑誌に掲載)