年頭所感
高まる変革のうねり──。
2024年は新たな交通システム構築の基盤固めの年だ。

 2024年は辛く厳しい、試練のスタートとなってしまった。 能登半島地震。誰が正月元旦にこのような未曾有の災害が発生すると予測しただろうか。 過酷な現実に直面されている被災地の皆さんには、辛いだろうが何とか頑張ってほしいと心より願うばかりだ。

 振り返れば、2023年は暗く腹立たしいニュースが相次いだ。 闇バイト・ルフィー事件、旧統一教会問題、ビッグモーター不正請求、自民党裏金問題、 ダイハツ不正認証などなど、目を覆いたくなるような事件が連日のように世間を騒がせた。 MLB・大谷翔平、将棋八冠・藤井聡太の活躍に溜飲を下げた人も多かったに違いないが、 政治・経済界のあちらこちらで不祥事が発覚し、社会を震撼させた。 まさにニッポンはどうなる、どうするという国民の悲嘆と怒りが列島に渦巻いた1年だった。

 利益優先の陰で平然と実行してきた行動、悪弊が白日にさらされ、 社会の糾弾を浴びることになった事件が何と多かったことか。 日本は社会構造の見直し、再点検、再構築を迫られている。 破壊と創造に近い大ナタが不可避と言えようか。 それは日本丸の航海が勢いを取り戻すための、 新たなジャパンスタイルを構築するための痛みを伴う抜本的改革だ。

 無論、自動車業界も大きな曲がり角を迎えている。 ビッグモーター、ダイハツ事件はモビリティワールドに警鐘を鳴らし、 体質改善を迫るものととらえるべきだろう。

 EVシフトは紆余曲折の道筋を描きながらもさらに太く、 大きな潮流となって世界のモビリティ市場を席巻していくに違いない。 100年に1度と言われるモビリティ変革のエネルギーは大きなうねりとなって日本市場に押し寄せることは必至だ。

 四輪から二輪・三輪、自転車に至るまで電動車の普及が本格化していくことは間違いないだろう。 エレクトリックパワーはさらに勢いを増し、 “電動”で構成された新しい乗り物が次々と登場して我々のライフスタイルを変革していくはずだ。 IT・AIの進化がモビリティに与える影響力も絶大で、自動運転への流れも加速していくに違いない。 テクノロジーの進化は無限大だが、モビリティワールドはその恩恵を享受する典型的な分野なのだ。

 モビリティ変革の波は予測を超えて高まっていくだろう。 早晩、我々が選択する移動手段はまったく新しいシステムに切り替わっていくことが容易に想像できる。 しかしながら、いかにハイテクワールドが創出されていったとしても交通システムにおいて最も重視されるべき大原則は、 “人ʼʼが主軸であることだ。 都市部にせよ、地方、山間部にせよ、人に優しい移動システムであることを踏み外せば、 それはまったく本末転倒の交通社会となってしまうに違いない。

 今後、モビリティの区分、カテゴリー分けはブレンド、ミックスされていくだろう。 モビリティテクノロジーの進化によって陸・海・空の移動空間は加速度的に広がっていくはずだ。 さまざまなモビリティを“つなげる”、連携させることで利便性に優れた、 高度な移動手段が創出されていく。

 モビリティ新時代──。 人口減少に歯止めがかからない日本にとって新たな交通システムの形成は経済活性化を見据えた不可欠事項だが、 2024年はその歩みを進めるための基盤構築の年である。

(本誌・高木賢)


 INTERVIEW 
破綻と矛盾が続出した2023年。
難題山積の今こそ

新たなモビリティビジョン構築の好機だ。

山下PMCシニアマネージャー  高木啓司

 混迷の時代を象徴する暗く、衝撃的なニュースが相次いだ2023年。 モビリティ業界においてもビッグモーター保険金不正請求、ダイハツの不正認証問題が発覚し、 社会の厳しい糾弾を浴びている。 これらの不正事件は決して一過性の事件ではなく、 自動車業界の体質・構造に関わるものとも見られるところに問題の根深さがあると言えそうだ。

 もちろん、隠蔽されてきた悪しき慣習の弊害は自動車業界だけにとどまるものではなく、 政治・経済・社会の各方面でほころびが露呈されている。 続出し始めた破綻と矛盾──。 裏を返せば、今こそ日本は新たなビジョンの構築と提示に注力すべき時なのだ。

 山下PMC シニアマネージャーとして活動する傍ら、文筆業にも注力する高木啓司氏にインタビューした。


 EV文化論再考
「Electric Vehicle」の進化が不可欠なヨーロッパ。
スタートアップ企業の製品開発を支える思想と哲学を考察する。
文・写真  沖一幸 

EVは文化である。ヨーロッパにおけるVehicle開発の歴史をたどれば、いよいよその感を深くする。

農業や建設用の車両から船舶、軽飛行機までヨーロッパでは乗り物の電動化が連綿として進められてきた。

中でも私が強く惹かれるのは、スタートアップ企業の電動車両開発にかける熱情である。

彼らにはEV開発に立ち向かう強固な思想、哲学がある。だからこそ、EVは文化であると言えるのだ。


 INTERVIEW 
想いはフルスイング!
EVの本格普及を目指し、市場開拓に全力傾注

日産自動車日本マーケティング本部 チーフマーケティングマネージャー  寺西 章

「我々にはクルマづくりの自信と自負があります。それはガソリン車でもEVでも同じことです。 魅力的な商品でEVの風を吹かせたい。EV市場を活性化させ、フルスイングで勝負したいです」

 リーフでEV普及の突破口を開き、サクラ、アリアで国内のEV市場を牽引する日産自動車。 同社の国内EV戦略の先頭に立つのは横浜市西区の本社内に拠点を置く日本マーケティング本部だ。 同本部の寺西章チーフマーケティングマネージャーは、 EV本格普及に向けたビジョン、構想を熱く語ってくれた。


 新春特別寄稿
医療と患者を結ぶモビリティ

 成果が期待される奈良県宇陀市の 自動運転実証実験
 富和清訓 

 少子高齢化・人口減少が続く日本。 地域社会の移動手段、交通システムの再構築は我々に突きつけられた最重要課題だ。 昨今、その難問に対する答え、選択肢のひとつとしてクローズアップされているのが自動運転バスの導入だろう。

 人口減少に歯止めがかからない奈良県宇陀市では 2023年12月4日から同22日までEVバスを使った自動運転実証実験を実施した。 この試みは高齢者の買い物、病院への通院に確かな成果を上げ、 今後、地方のまちづくりに有効なヒントを提示することになった。

 本誌の連載記事「新・こちらドクターカー」でお馴染みの 奈良市在住の医師・富和清訓氏に宇陀市の自動運転実証実験を特別レポートしていただいた。


 シリーズ企画
モビリティ新世紀!
乗り物新時代・ビジネスシーンの“今”を追う。

 時代が猛スピードで変化していく中、各種乗り物の機能は日々進化を遂げ、 移動手段にもさまざまな形態が創出しています。

 脱ガソリンの潮流はいよいよ本格化しており、 パーソナルモビリティはこぞって電動化への道をひた走りはじめました。

 乗り物新時代を迎えた今、「Mobility Life」は自転車のみならず、 超小型EVをはじめとするさまざまな乗り物の最新情報を取り上げ、 新たなモビリティが生み出すまちづくりの実態を追っていきます。

モビリティ新世紀におけるビジネスシーンの“今”に迫ります。


 BICYCLE-E・MOBILITY CITY EXPO 2024
次世代“まちづくり”展望する モビリティ×インフラの大提案

“電動”の時代──。 EV、e-BIKE、EV充電器、駐輪機器大集合!

 「BICYCLE-E・MOBILITYCITY EXPO 2024~自転車・電動モビリティまちづくり博~in 新宿住友ビル三角広場」は 電気自動車、電動二輪・三輪車、電動アシスト自転車、電動キックボード、EV充電インフラ機器、 駐輪・駐車場関連機器など各種電動モビリティとインフラ系の製品・システムに焦点を合わせた 未来志向のイベントだ。 


 INTERVIEW 
神戸市
駐輪場Webサービスを開始
電子申請・決済システムの導入が利用者に好評

 人口約150万人を抱える神戸市は大阪市、京都市とともに近畿大都市圏における中心都市だ。 海と山が迫る東西に細長い市街地を持ち、自転車は市民の日常生活に欠かせない乗り物として活用されている。 それだけに神戸市は駐輪場の整備を自転車行政の中核に据えているが、 注目されるのは2023年8月から導入した駐輪場のWebサービスだ。

 この駐輪場Webサービスは 神戸市が推進するスマートシティ化の基本方針に沿って開発した電子申請・決済システムで、 駐輪場利用者の利便性向上と管理業務の負担軽減の実効を上げている。

 官の神戸市と民のアーキエムズ社による官民連携の駐輪場Webサービス──。 神戸市はこのシステムのソリューションを全国の自治体に向けて広く発信していく方針だ。

 神戸市建設局道路計画課の佐野俊幸係長、 同課の自転車・駐車場運営担当の安藤謙一郎氏にインタビューした。


 Close-up
2024台北国際自転車展
3/6〜3/9 台北市・南港展示ホールで開催

ジャイアント、メリダ、シマノなど有力メーカー約900社が出展

 2024台北国際自転車展(主催:TAITRA・中華民国対外貿易発展協会)は、 3月6日から9日までの4日間、台北市の南港展示ホールで開催される。

 同展は自転車のビジネスショーとしては世界トップクラスの規模を誇る展示会で、 今年も約900社(3400小間)の企業が出展することが確定している。 ジャイアント、メリダ、シマノをはじめとする有力メーカーが開発した 最新鋭自転車及びパーツ・用品が展示される。


 Close-up
テスラ
国内100ヵ所目のスーパーチャージャーを東名川崎ICにオープン

サイバートラックにインスパイアされた特別仕様のエクステリア採用

 テスラモーターズジャパン(本社:東京都港区、代表:デイビッド・ジョン・フェインステイン)は 昨年12月、東名川崎IC近くに国内100ヵ所目となる 急速充電ステーションのスーパーチャージャー東名川崎を開設した。

 同社は2014年9月、東京・六本木に国内初のスーパーチャージャーを開設しており、 9年の歳月をかけて100ヵ所目のスーパーチャージャーを整備したことになる。


最新号コンテンツ
年頭所感
高まる変革のうねり──。
2024年は新たな交通システム構築の基盤固めの年だ。
多彩なモビリティを“つなげる”、連携させることで高度な移動手段が創出される。
INTERVIEW
難題山積の今こそ新たなモビリティビジョン構築の好機だ。
山下PMCシニアマネージャー 高木啓司
EV文化論再考
「Electric Vehicle」の進化が不可欠なヨーロッパ。
スタートアップ企業の製品開発を支える思想と哲学を考察する。
沖一幸
INTERVIEW
想いはフルスイング!
EVの本格普及を目指し、市場開拓に全力傾注
日産自動車日本マーケティング本部 チーフマーケティングマネージャー
寺西章
新春特別寄稿
医療と患者を結ぶモビリティ
成果が期待される奈良県宇陀市の自動運転実証実験
医学博士 日本整形外科専門医 富和清訓
シリーズ企画 モビリティ新世紀
乗り物新時代・ビジネスシーンの“今”を追う
新電元工業/アイキューソフィア/東光高岳/日東工業 /ベルエナジー/アルテック/DMM.com/Acalie/aidea×HTL/山田製作所 /エネリバー
BICYCLE-E・MOBILITY CITY EXPO 2024
次世代“まちづくり”展望する モビリティ×インフラの大提案

“電動”の時代──。
EV、e-BIKE、EV充電器、駐輪機器大集合!
INTERVIEW
我々の絶対命題は 車体の安心・安全を守ること。 それに尽きます」
一般社団法人日本自動車車体補修協会(JARWA)会長
吉野一
INTERVIEW
神戸市、駐輪場Webサービスを開始
電子申請・決済システムの導入が利用者に好評
Close-up
2024台北国際自転車展
ジャイアント、メリダ、シマノなど有力メーカー約900社が出展

テスラ、日本国内100ヵ所目のスーパーチャージャー開設
連載・読み物・情報
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                    金籠 史彦
  • 自転車を眼鏡にして世の中を見る 小林 成基
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                    片岡 大造
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