中古車販売大手のビッグモーターによる不祥事、不正修理事件が世間をにぎわしている。 当然のことだろう。売上げを伸ばすために自動車を自ら傷つけ、不当な保険金を請求する。 言語道断の行為である。同社と損害保険会社とのもたれ合いも指摘されており、 ビッグモーター事件は自動車業界の根深い闇の部分を白日にさらすことになった。
人は自動車の修理金額に対して寛容になりがちだ。 それは自らの身体、命に関わる自動車の修理に対してはあまりケチりたくない、 きちんと修理してほしいという気持ちを潜在的に持っているからだろう。 食事、衣服、旅費など生活全般についてシビアな金銭感覚を持つ人でも自動車の修理金額については鷹揚で、 修理会社の言うがままになる傾向が強い。
車好きの人ならばいざ知らず、一般の自動車オーナーは車のメカに関しては充分な知識を持っていない人が多いはずで、 修理会社の要望、請求金額をほぼ鵜呑みにせざるを得ない。 そして、肝心なことは「まさか車の修理でそんな不正が行われるはずがないだろう」という考えを多くの人が持ってきたことだろう。 ビッグモーターの不正修理は、そうした日本人の中にある性善説的な考え方につけ込んだ悪質な事件である。
国が陸続きの欧州、多民族国家の米国などと異なり、 島国国家の日本では性善説が成立しやすい精神的土壌が根底にある。 性善説とは言い換えれば人と人との信頼関係をベースにして成り立つわけだが、 ビッグモーター事件はそうした日本人が培ってきた精神的風土を根底から揺さぶるものだろう。 軽犯罪の類から命に関わる深刻な事件までを含め、日本にはかつてなかったような醜悪な事件が増えている。 ビッグモーター事件はそうした日本人の劣化を感じさせる不祥事と言えるのではないだろうか。
もちろん、日本人が世界に誇れる心身の能力、精神の有り様といったものはまだまだ健在であると信じたいが、 あちこちでほころびが目立ってきていることも事実だ。自戒すべきであろう。
ビッグモーターが主力業務としてきた修理・アフターメンテナンスは自動車修理業界全体に関連することでもある。 業界全体がビッグモーター事件を他山の石としてしっかりと襟を正すことが大切だろう。 モビリティ革命、EV シフトが進む今だからこそ、不正の芽を一掃することが求められている。
(本誌・高木賢)
日邦プレシジョン(本社・山梨県甲府市、代表取締役社長・古屋俊彦)と 東海技研(本社・神奈川県横浜市、代表取締役社長・大槻壘)の両社は 山梨大学、山梨県と連携して水素・燃料電池電動アシスト自転車等の開発を進めてきたが、 8月21日から同自転車をレンタサイクルとして採用した公道走行の実証事業を開始した。
水素・燃料電池電動アシスト自転車の公道走行は日本初の試みで、 甲府市の「道の駅富士川」と甲府市役所を拠点として2025年7月1日まで実施される。
公道走行を開始した初日には日邦プレシジョン、東海技研、山梨大学、山梨県の代表者らが 「道の駅富士川」に参集し、走行開始セレモニーを開催した。
2030年までにEV充電器の設置台数を15万基(急速充電器3万基、普通充電器12万基)設置する──。 日本政府が掲げるグリーン成長戦略(改訂版)を背景として、日本のEV充電インフラ整備が活性化している。
無論、EV充電インフラ整備の成長戦略は 「2035年までに国内新車販売における電動車(EV・HV・PHV・FCV)の比率を100%にする」 という2021年1月発表の政府方針とリンクしているわけで、 日本が脱ガソリン・カーボンニュートラルへ向けて大きく舵を切ったことは周知のとおりである。
EV 充電器メーカー各社の製品開発には拍車がかかっており、輸入製品を含めて注目すべき急速充電器、 普通充電器が市場をにぎわしている。 充電器の販売・サービスを手掛ける企業にとってもビジネスチャンスが一気に広がっているわけで、 15万基市場へ向かってEV充電器の〝陣取り合戦〟が熱気を帯びている。
EV を蓄電池として活用し、家庭、工場、事業所などに電力を供給するV2H、V2Xの普及もさらに進んでいくはずだ。
脱炭素・カーボンニュートラルの追い風に乗って加速するモビリティ革命。EV化の波はさらに広がっており、 それを下支えする充電インフラの整備もさらなる進展を続けていくことは間違いないだろう。 高速道路のSA・PA、道の駅、商業施設、コインパーキング、ホテル、公共施設、地方自治体、マンション、戸建て住宅······、 EV充電インフラを整備する場所、エリアは無限大と言えるはずだ。
CO2削減を視野に入れたEV普及への流れ、モビリティ革命のムーブメントは時代の要請であり、 カーボンニュートラルをバックボーンとするEVの開発・普及がさらに進展していくことは明らかだ。 欧米と比較して日本におけるEV化の足取りは遅いと言わざるを得ないが、 それでも早晩、一気に加速していくことはほぼ間違いないだろう。 そして、そのベースとなるのがEV 充電インフラの整備・拡充なのだ。
本誌では本号と次号の2回に分けて 特集「EVシフトの現在地・2023 EV充放電インフラの現況と可能性を探る。」を組むことにした。 EV 充電器の製品展開、EV 充電インフラの整備状況と今後に向けた方向性、 充電器配備の課題・問題点、V2H・V2Xの普及状況と可能性などを探っていく。
日本のEVシフトは、これからが本番だ。
カーボンニュートラルを背景として、EVシフトが加速している。 自動車メーカーがEVラインアップを強化し、充電機器メーカーがEV充電インフラの開発に注力するのは正に時代の必然だ。 新興EVメーカーによる国内EV市場への参入もさらに勢いを増していくはずだが、 そこに求められるのは信頼度の高いメンテナンスネットワークだろう。
自動車の補修・整備を手掛ける一般社団法人日本自動車車体補修協会(JARWA)は、 新興EVメーカーの要望を受けて7月7日、「新興EVメーカー連絡協議委員会」を発進させた。
時代の要請ともいうべきEV対応の整備ネットワークの構築を推進するJARWAの吉野一会長にインタビューした。
EVのIONIQ(アイオニック)5、FCVのNEXO(ネッソ)を掲げ、 Hyundai Mobility Japan(ヒョンデ)が日本市場で独自の販売戦略を推進中だ。 2009年に日本市場から撤退した同社だが、昨年5月、13年ぶりに日本に再上陸し、 次世代パワートレインに特化した製品展開で復権、反転攻勢への道をひた走る。
世界全体で年間684万台を販売し、トヨタ、フォルクスワーゲンに次ぐ世界第3位の地位に躍り出たヒョンデだが、 同社がグローバルメーカーとしてのプライドを掛けて越えねばならないハードルはライバルひしめく日本市場の壁だろう。
技術力を徹底強化し、EV、FCVで日本市場の攻略に挑むヒョンデの動向は特注だ。
今春4月、名古屋市の中心街として知られる栄地区の歩道上にスタイリッシュな電磁ロック式駐輪機場が誕生した。 ラックの数量は約3000台で、かなり広範囲なエリアをフォローしているわけだが、 整備された駐輪エリアはスッキリ感が漂う。なぜか──。
その理由は簡単だ。この新型駐輪機は配管・配線不要の完全ワイヤレス駐輪機なのだ。 同製品を導入したのは独自機器の開発・提案で知られる東海技研(本社・神奈川県横浜市、代表取締役社長・大槻壘)。 名古屋市から工事を受注するや間髪を入れず昨年12月から土木工事に入り、 約4ヵ月でラック3000台の配備を完了させた。
異例と言うべき短納期工事を実現したわけだが、 それを可能にしたのは配管・配線不要のワイヤレス駐輪機を採用したからに他ならない。
ワイヤレス駐輪機──。 名古屋市に配備されたこの新型駐輪機は日本の駐輪シーンを一変させても不思議ではない。